頭皮にカビ⁉ 湿疹やかゆみ、フケを防ぐ梅雨シーズンの皮脂対策とは？

ジメジメとした梅雨の時期になると、頭皮トラブルに悩む方が少なくありません。そんな季節に気を付けたいのが「カビ」。
梅雨から夏にかけて頭に汗や皮脂の分泌量が増えてくると、それを養分に常在菌が繁殖してかゆみや臭いの原因になります。特に皮脂とカビが原因で脂漏性皮膚炎を発症すると抜け毛を起こすことにもなるので注意が必要です。
鏡で見ることが難しい頭皮。気付かないうちに、できものやフケ、赤みに見舞われているかもしれません。高温多湿になる季節の頭皮環境は、薄毛にも影響してきますので、頭皮を健やかに保つセルフケアを知っておきましょう。

 

頭にカビがいる！？　湿疹の原因はマラセチア菌？

頭皮は顔の約2倍の皮脂腺が存在しているため、高温多湿に加え、紫外線が強くなるこれからの時期には、額の約2.5倍の皮脂が分泌されると考えられます。
こうしたことから炎症や湿疹などの皮膚疾患を起こしやすくなるのですが、特に薄毛につながる脂漏性皮膚炎（しろうせいひふえん）のリスクが高まることに注意しなければなりません。
脂漏性皮膚炎は、頭や顔面など皮脂分泌の多い場所にできる湿疹で、脂漏性湿疹とも呼ばれています。発症の原因とされるのが、マラセチア菌というカビ（真菌）の一種です。
「頭にカビ？」と驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、マラセチア菌はもともと人の皮膚に存在する常在菌で、通常は肌を弱酸性に整え、コンディションを保つ役割を果たしています。
ところが蒸し暑さや睡眠不足、ストレス、食生活やホルモンバランスの乱れなどにより頭皮の皮脂が過剰になると、それをエサに菌が異常に繁殖してしまうことがあります。
そしてマラセチア菌が皮脂を分解する際にできる遊離脂肪酸が酸化して生じる、刺激性の強い過酸化脂質が炎症を引き起こすと考えられています。

 

人から感染する頭部白癬にも注意！

また、「しらくも」とも呼ばれる頭部白癬（とうぶはくせん）も、薄毛につながる可能性があるため注意してほしい病気です。
頭部白癬は、頭皮に皮膚糸状菌（ひふしじょうきん）という菌が感染することで起こる感染症です。
皮膚糸状菌とは、髪や皮膚を構成するタンパク質のケラチンを養分とするカビ（真菌）のことです。これに感染した人や動物などに触れることで感染すると、発疹やフケ、抜け毛、髪の毛が折れやすくなるなどの症状があらわれます。
感染している部位が赤くなることがありますが、かゆみや痛みなどはあまりみられません。
この菌は人から人へ感染するので、プールや海などに行く機会の増える夏場に向けて増えてくるので知っておきましょう。

 

脂っぽい“ブツブツ”はカビが原因かも

梅雨から夏には皮膚トラブルに悩む方が少なくありません。特に赤い湿疹が顔や頭にできると、「あせも？ニキビ？」と思う方が多く、その正体がカビの一種のマラセチア菌による脂漏性皮膚炎だとはなかなか気づかないのではないでしょうか。
夏を目前に控えたこの時期、頭にニキビができていると思っていたら、実は脂漏性皮膚炎だったというケースはとても多く、その原因はカビの一種が増殖したことで起こっている症状ということもあります。

 

脂漏性皮膚炎は脂っぽいフケが出るのが特徴

頭皮の脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多く、洗いにくい場所に多発します。例えば、耳の後ろやうなじ、髪の生え際などに現れやすいといえます。
地肌が炎症を起こして赤くなるほか、湿疹や皮膚が刺激されてターンオーバーが早まり、剥がれてベタベタしたフケが出ることが特徴です。
湿疹や炎症に気づかなかったとしても、フケやかゆみ、べたつきなどがあるなら頭皮に湿疹ができている可能性があります。
もし耳の裏が赤い、フケが増え洗髪しても減らない、額の生え際が赤い、皮がむけているといったことがあれば、要注意ですので皮膚科を受診することが望ましいでしょう。

 

頭皮に“かさぶた”ができている場合

ふと頭を触った時、かさぶたのようなできものがあったということもあるでしょう。
脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ニキビなどがあって引っ掻いたり、掻きむしったりして皮膚が傷つくとリンパ液に似た浸出液が分泌されます。
浸出液の役割は、細菌やウイルスから傷口を守り、傷を治し回復を早めようと働きかけます。そして時間が経つと自然と乾燥し固まります。それが“かさぶた”です。
かさぶたができたから、すぐに抜け毛や薄毛になることはありませんが、広い範囲にかさぶたがあり治癒が長引くことで、髪の毛の成長が阻害され抜け毛を招くことはあります。
かさぶたを見つけたら触らないこと、無理にはがそうとしないことが大切です。
かさぶたから浸出液が出ている時に触ると、治そうとしている作用を阻害することになります。治りが遅くなりますので触らないようにしましょう。
そして、できものから浸出液が出ている時は、かさぶたになるまでシャンプーを控えること。かさぶたになっても、患部を引っ掻いたりしないように優しく洗うようにしましょう。

 

頭皮に湿疹が起こる病気とは？

脂漏性皮膚炎や頭部白癬のほかに湿疹を引き起こす原因となりうる病気についてもお伝えしておきます。

 

接触性皮膚炎

接触皮膚炎はシャンプー、コンディショナーなどのヘアケアアイテムに刺激物質やアレルギーの原因となる物質が含まれている場合に、皮膚で起こる皮膚炎です。
湿疹や水ぶくれ、かゆみ、ヒリヒリ感などの症状が現れます。原因になったものとの接触を断てば症状が落ち着くことがあるため、原因を特定して早めに対応することが重要です。

 

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、頭皮や体にかゆみを伴う湿疹ができたり良くなったりを繰り返す病気のことです。ほかにバリア機能の低下や乾燥などの症状が現れることもあります。
遺伝や免疫機能が正常に働かないことなどが原因で発症する、と考えられています。

 

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

尋常性乾癬は、皮膚に紅い斑点や白い発疹が生じる病気です。それが乾燥してはがれ落ちたり、かゆみが出たりといったことが生じます。
生え際や頭皮のほか肘、腰、膝、臀部の外的物理的刺激が加わりやすい場所や免疫学的異常によって起こりストレスなどによって悪化することがあります。

 

蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹は、円形や楕円形などの赤みのある盛り上がりが発生する病気です。
チクチクした違和感やかゆみがある場合もあります。原因としては、疲労やストレス、食べ物、感染などと考えられ、全身および頭皮にも出ることがあります。

 

頭皮の湿疹はなぜ薄毛につながるのか？

頭皮に湿疹ができる病気をご紹介しましたが、脂漏性皮膚炎と頭部白癬以外にも、頭皮に湿疹や炎症があると二次的に薄毛や抜け毛を起こす可能性があります。では、なぜそうなるのかを解説します。

 

頭皮環境が悪化する

頭に湿疹ができている際には、マラセチア菌などの細菌や皮脂が増加していることが多いです。皮脂や菌による頭皮環境の悪化で発毛機能へダメージが及び、薄毛を招く恐れがあるのです。
大正製薬株式会社と明治薬科大学薬学部の共同研究で、AGAの症状のある方の頭皮には皮脂成分であるトリグリセリドやマセラチア菌、アクネ菌などが多いことが報告されています。頭皮の過剰な皮脂や細菌が、AGAを進行させる可能性もあると考えられます。

 

毛周期が乱れる

湿疹による頭皮環境の悪化は、毛周期の乱れを起こすことにもつながります。
毛周期が乱れ、髪の成長期が短縮すると、髪の毛が成長せずに抜けて行きますので、髪の毛が細く短くなったり、抜け毛が増えたりします。
髪の毛の成長が不十分になってしまい、薄毛が進行してしまいます。

 

かさぶたが髪の成長を阻害する

皮脂分泌が活発な所や、湿疹を掻いた時にかさぶたができることがあります。かさぶたを放置すると髪の毛の成長がストップしたり、新しい毛髪が生えてこなくなったり、薄毛の原因となりうるマラセチア菌が繁殖したりする恐れもあります。

 

頭皮の湿疹による薄毛や抜け毛を防ぐ方法

頭にできた湿疹から薄毛や抜け毛が起こることを防ぐには、どんなケアをすればよいのかについて説明します。

 

皮膚科などの医療機関を受診

頭皮の湿疹を治すためには原因を正しく診断してもらい、それに合ったケアが必要です。
湿疹を起こす原因は様々あるため、ご自身で判断するのは難しいといえますので、気が付いたら早めに医療機関を訪ねましょう。
医師に診察してもらい原因を明確にした上で状態に合った治療が受けられます。湿疹と一緒に薄毛や抜け毛も気になるという方は、薄毛専門のクリニックを受診することをおすすめします。

 

外用薬や内服薬の利用

頭皮の湿疹を改善するには、外用薬、内服薬などを処方されます。湿疹の原因となっている病気に合う薬を使うことで、症状の改善が期待できます。
日本皮膚科学会のガイドラインなどの資料によると、湿疹の治療には以下のような薬が用いられています。
例えば脂漏性皮膚炎の場合には、ステロイド外用薬、抗真菌剤、ケトコナゾールなど。頭部白癬には抗真菌剤、接触性皮膚炎にはステロイド外用薬、内服薬、抗ヒスタミン薬などといった薬剤を治療で使用することがあります。

 

湿疹ができないような生活習慣を！

頭皮の湿疹を防ぐには、洗髪を大切にしましょう。湿疹が出ている患者様の中には毎日髪を洗わない方や、かゆみを軽減するためにトニックシャンプーを過剰に使用するなどの誤ったケアをしている方もいます。
必ず一日の終わりに洗髪をし、洗う際には頭皮を傷つけないよう指の腹で優しく洗いましょう。界面活性剤が含まれたシャンプー剤は洗浄力が高く、必要な皮脂も落としてしまい頭皮環境が悪化する可能性があるので注意が必要です。
またストレスによって湿疹ができたり悪化したりすることもあるため、ストレス対策も大事です。脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の発症にはストレスも関係しているとされていますので、十分な睡眠を取りウォーキング、ジョギングなどの適度な運動と日光浴などで気分転換をするなど、自分に合った対策を行いましょう。
頭皮の湿疹や抜け毛を防ぐには、紫外線対策もしっかり行いましょう。紫外線を浴びると炎症や乾燥を起こすとされており、脂漏性皮膚炎にも影響します。
紫外線は毛根を萎縮させ、髪の成長を妨げるともいわれているため紫外線対策が重要です。
頭皮用の日焼け止めや帽子、日傘を使うなどの対策を万全に行いましょう。

 

まとめ

頭皮のかゆみやヒリヒリ感、ぶつぶつ、炎症などの症状がある場合には、湿疹ができているかもしれません。
湿疹は頭皮環境や毛周期の乱れを招き、薄毛や抜け毛を起こす可能性があります。そのため、頭皮に湿疹ができたら早めに対処し、薄毛や抜け毛の症状が進行していると感じたら、薄毛専門のクリニックの受診も検討しましょう。
毛髪は、頭皮の内部で作られ成長します。頭皮は畑の土壌のようなもので、荒れていると作物が育たないように、健康な毛髪が育ちにくくなりますので、これからの季節は特に頭皮環境に注意して対策していきましょう。